新海誠監督の「君の名は。」観てきました。
個人的な感想を言えば、
「大傑作とまでは言えないけれど、満足度の高い映画」
といった感じでしょうか?
正直。
すごく良い映画であるとは思うのですが。
脚本のツメの甘いところが随所に目立ち、それがどうにも気になって物語に没入できませんでした。
テンポの良さや分かりやすさ、物語のコアな部分を伝えるためには、その辺は枝葉末節であるとは分かるのですが、SF者としてはやはりそれが引っかかって、もやもやしたままです。
ただ、万人にお勧め出来る素晴らしい映画だと思うので。
どうしようかと迷っている人は是非。
あの映像の美しさは、映画館で観ておいて損はないと思います。
以下、ちょっとした感想的なあれこれ。
小説等を読んでの裏取りはしていないので、見当違いかもしれないので、ちょっとあけます。
(ネタバレ大いにあり)
「君の名は。」の中で、「むすび」が重要なキーワードであることは多くの人が指摘しているところですが。
それと同様に「かたわれ(=片割れ)」という言葉も、重要なモチーフであると思う、という話を。
冒頭の古文の授業で、
「黄昏=誰そ彼=彼は誰=かはたれ」
という説明をするとき、
「この地方の方言では、【かたわれ(どき)】とも言う」
ということが示されます。
あれ?と思いました。
そんな言葉、聞いたことないぞ。
もし本当にそんな方言があったとしても、あえて「かたわれ(表記は「かたはれ」かも?)」と言わせるのは何故だろう。
この映画のタイトルは、「君の名は。」。
つまり、
「誰そ彼 or 彼は誰=貴方は誰・お前は誰だ」
な訳で、「かたわれ」なんて捻らなくても、もろに主題な訳ですよ。
それをあえて かたわれ にした。
実際、映画の中には、「片割れ」なモチーフが沢山(意図的に)出てきます。
三葉の半分である口噛酒。
瀧のTシャツの絵柄(&文字)のHALF MOON。
2つに分裂した彗星。
(彗星の名前である「ティアマト」はメソポタミア神話の女神に由来し、「死後その身体を2つに割って、天と地を創る」というエピソードもある)
分かたれる2つの運命(生のルートと死のルート)。
片方が割れて砕ける(=死ぬ)展開。
記憶を失っても引かれ合う魂の片割れ同士。
その辺を意識して、あえて「かたわれ」という言葉を用いたのではないかな、と。
そうなると、彗星の周期が何故1200年なのかも、何となく理解できる気がします。
(万葉集の正確な成立時期は不詳ですが、7世紀後半〜8世紀後半という説が一般的)
あと、気になったことを幾つか。
彗星で隕石落下するのは3度目なのかな、という気がするのですが、その辺はどうなんだろう。
祠のある辺りってどう見てもクレーターで。
でも前回の隕石落下跡は糸守湖になっていて、他の言及はなし。
となると、あれは更にそれ以前のことなのかな、と。
糸守、隕石落ちすぎw
ただ、そう考えると。
私があの映画を見終えて一番やるせなかった、
「人々を災害から救うことは出来ても、あの美しく穏やかな糸守の町は失われてしまったのだ。
彼らは故郷を永遠に失ってしまった、流浪の民になったのだ」
というところに、少しだけ救いがあるのかな、と。
何度隕石が落ちても、糸守の町が存在したように。
きっといつか、糸守の町は復興するのだろう。
そういう希望が仄かに見える気がして、ちょっとだけ安心しました。
(が、そうなるとつまりは、また1200年後に隕石落下が有り得ると言うことにもなるけど。
あまり救われないか? ま、まぁその頃には隕石破壊ミサイルか何かが出来てるだろ(何))
個人的にはどこかのブログであった、
「あれは、彗星が糸守の住民を滅ぼそうと何度もチャレンジして、また失敗した話」
というネタが、激しくツボw
それから。
やっぱり宮水の女は、体の入れ替わりにより婿取りをしてる一族なんでしょうかね?
(おばあちゃんが、それっぽいことを匂わせていたし)
だから、三葉のお父さんはずっと昔、三葉のお母さんと体が入れ替わったことがあり。
2人の運命が現実で成就したとき、その記憶は失われた。
中身が瀧の三葉がお父さんを説得に行っ(て失敗し)た時。
お父さんが思わず、
「お前は誰だ」
と口走ってしまうのは、その記憶(と言うかおぼろな感情)が、魂の奥底にあったからなのではないか、と。
そしてクライマックスに、三葉がお父さんを説得に行ったとき。
その後の描写は省略されているのですが、あの場に何故かおばあちゃん(と四葉)がいたので。
おばあちゃんは入れ替わりこそが宮水一族の存在意義であると理解したが故に、三葉の説得の助勢に来たのではないかな、と。
お父さんは思い出せずとも、かつて三葉のお母さんに言われたことに思い当たる節があったり、記憶は失っていても三葉の言うことを信じるに足る感情が呼び覚まされたりしたのではないか、と。
そして三葉の言うことを信じ、防災無線で住民の役場から避難を呼びかける。
全てが終わったあと、テッシーのお父さんと口裏を合わせ、「あの爆発は緊急の災害訓練であった」と、住民にアナウンスした。
という感じだと、一応の辻褄が合うのかなー。
でもさ。
災害から人々を救おうとするならば、入れ替わりって回りくどすぎるよね。
もーちょっとやりようはなかったのか、神様よw
答え合わせのつもりで、もう一度は観に行く予定。
やっぱり小説版2冊、買おうかなぁ・・・。
【10/1付記】
2回目、観に行ってきました。
2回目の方が、謎解きを追わずストーリーに没入できたので、素直に感動できました。
オープニングで、ほとんど全てのネタバレをしてることに、改めてびっくり。
3年のズレを示す身長差、おぼろにフェードアウトする三葉、受け渡される赤の組み紐。
良くできてるなー、と思います。
あと、メタファーもいっぱい使われてるな、と思ったり。
(上記した「片割れ」とかもそうだけど)
主人公の名前の「瀧」が、以前から気になってて。
それ、人の名前じゃないだろう、と。
(映画見初めてしばらくは、「苗字?名前?どっち??」と思ってた)
でも、瀧って「さんずい+龍」なんですよね。
ヒロインの苗字は「宮水」。
多分主神は龍。
(巫女姿の簪が、龍を模したもの)
更に深読みするなら、2人が再会するのは「須賀神社」。
須賀神社の主神は、八岐大蛇の逸話で有名な須佐之男命。
大蛇は龍に通じる。
とか、どこまでも深読みできそうな仕掛けが、オタク心を揺さぶります。
それから。
最後の方で奥寺先輩が指輪をしていたのは前回も気付いていたのだけれど、その前シーンで司も指輪してたよ!
あの2人くっついたんだよね!?
(そうでなければ、あえてあのシーンで司の指に指輪を描く必要性はない)
奥寺先輩と司くんのコンビは大好きだったので、くっついてくれて嬉しいなー。
卒業と同時に結婚か。さすが内定8社のエリートは違うぜ!
これだけでも、2度目みた甲斐があったというもの♪